本の話

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『メメント・モーリ』(おのりえん)―自らの力で

鬼の国には“十年儀式”という儀式がありました。 鬼の国で十年を過ごした者は、十年目の“誕生日”を国中の鬼たちから祝ってもらえます。儀式の中で、十歳になる鬼の子どもは、自分が何者になりたいかを宣言します。それによって正式に、一人前の鬼として国...
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『古代の朱』(松田壽男)―魔的な赤

なんて美しい朱(あか)だろう。心をざわめかせる。 私は顔彩という日本画絵具をよく使います。顔彩を使っていると、日本の伝統色とその由来には意識的になる。それでも、「朱」と言われてまず思い浮かぶ色は、神社の鳥居の色でした。赤みの強いオレンジ色で...
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『図書館へ行こう』(田中共子)―いちばんやさしい本の狩り方

としょかんだいすき石井菱砂です。年末は図書館に関する本を集中的に読んでいました。もちろん図書館で借りて。 その中に、岩波ジュニア新書から出ている『図書館へ行こう』(田中共子著)という中高生向けの手引きがあります。これは、本を能動的に読み始め...
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『マリア様がみてる』シリーズ(今野緒雪)―私たちはいつでも真剣

今年2020年のクリスマスカードは『マリア様がみてる』(今野緒雪)にしてみました。聖歌隊です。左から聖さま、祐巳ちゃん、祥子さま。 復活祭やクリスマス前になると、聖歌隊は定期メンバーに加え増員をかけます。別に歌がうまくなくていい。狙うのは練...
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『テレヴィジョン・シティ』(長野まゆみ)―Circulationを解いて

さあ、『テレヴィジョン・シティ』。 長野まゆみの“円環脱出系”作品の、これが最大難度じゃないか。上に行っても下に行っても、なかなか出口がみつからない。遠心力で壁に叩きつけられる。それでも外に出ようとする。 アナナスとイーイーは、《鐶の星》の...
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『白鳥の歌 中村苑子句集』(中村苑子)―遠く暗い鐘の音

中村苑子を知ったのは大学時代で、それから毎年のようにこの句が思い出される。 日が高く昇った夏の静かな朝、暗い室内から、あかるい窓の外を見ているとき。荒涼とわが身わが夏はじまれり中村苑子著『白鳥の歌 中村苑子句集』p.19より ふらんす堂から...
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『陰陽師』シリーズ(夢枕獏)―人の世に繋ぎとめるもの

最初に出会った安倍晴明ものが、夢枕獏の本作だったので、晴明の隣には相棒・源博雅がいるのが私の中では自明になっています。 フィギュアスケーターが氷上で安倍晴明を演じたとき、それはそれだけで素晴らしい演技だったのですが、BGMの笛の音を聴きなが...
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『雪が白いとき、かつそのときに限り』(陸秋槎)―ひとすじの足跡

本を開いただけで冷たい風が流れ込んでくるような心地がした。胸をはっとさせる雪の匂い。 昔、推理小説ばかり読んでいた時期がありました。それもいわゆる新本格ミステリと言われる、厳格なロジックのものばかりをです。「新本格」はロジックを重んじて、情...
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『バルセロナ、秘数3』(中沢新一)―中沢新一という視点

自家用CDジャケットを作成しました。バッハのトッカータ、BWV911のために。私にはこの曲のフーガ部分は、森の中で鳥が鳴き交わしているように聞こえます。 中央のゴム版は単色で押し、画像を取り込んで加工する段階で、鳥だけ色を変えています。 ほ...
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『終電車ならとっくに行ってしまった』(フジモトマサル)―夜の好きな人のために

私は夜の好きな子どもだったし、今でも夜の好きな大人だ。 静まりかえった道が青白い街灯に照らされているのや、知らない家の灯がぽつんと点いているのを見るのが好きだ。貨物列車が太古の竜のように厳粛にカーブを曲がり消えていくのも、よく見に行った。そ...