今年のクリスマスカードです。長野まゆみ著『天体議会 プラネット・ブルー』より、銅貨と兄の藍生を描きました。

12月の街をゆく。天球儀なんて、セールしてたらみんな欲しいですからね。
実はいままで、どうして藍生が下級生に人気なのか、私にはよくわかりませんでした。銅貨を含め、水蓮も謎の少年もそろって藍生を慕いますが、彼はことさら面倒見の良いほうではない。愛想もないし、下級生相手に面白い話をするでもないのです。校内で会った弟の銅貨に「久しぶりだな」と言ってのけ、気分を害すれば年下相手に痛烈な意趣返しをします。こういう上級生、むしろ恐れられてあるべき気がします。
それでも、銅貨が藍生を好きな理由は作中で銅貨自身が語っているのでいいでしょう。だけど、その他の生徒からの大人気はなんだ。いったい、この人のどこらへんが好かれているんですか?(←ひどい)
改めて作品を読み返してみると、まず、藍生はその父にふるまいが似ていることに気づきます。律儀で綿密な仕事ぶり。一人で計画を立て、着実に実行するところ。なにより、自分の望みはなかなか口に出さないところ。自分と似ているところがあると思ったからこそ、父は藍生に何も言わずに結果だけ待っていたのです。意外に似た者親子です。そう思ってよく読んでみると、藍生も、銅貨へのひねくれた表現を除けば、基本的にはフェアで高潔で、地味な仕事を進んで丁寧にやり、他者の想いを言わなくてもある程度理解してくれる人間です。だから慕われているのです。
たしかにね。そして、そういう人に人気がでる社会って、考えてみればすごくまともです。ひと昔前のどこかの国みたいだ。『天体議会』は、ロケットが打ち上げられラジオが情報の最先端であるレトロな未来世界で、それが私たちの目から見ると逆に魅力的なのですが、人間観もいい意味でレトロで、私は好きです。
そんなことを考えながら描いていました。クリスマスセールの天球儀が銅貨の全財産ギリギリでも、頼みようによっては、藍生が(なにか理由をつけて)協力してくれるかもしれません。
……プレゼントしてくれるとは思わない。ぜったいそれはないよ。この兄弟はそこがおもしろい。
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◆長野まゆみ著『天体議会 プラネットブルー』について
◆去年のクリスマスカード。同じく長野まゆみ著『天球儀文庫』より。
◆ほか、過去の『天体議会』クリスマスカード。







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