本を開いただけで冷たい風が流れ込んでくるような心地がした。胸をはっとさせる雪の匂い。
昔、推理小説ばかり読んでいた時期がありました。それもいわゆる新本格ミステリと言われる、厳格なロジックのものばかりをです。「新本格」はロジックを重んじて、情念や社会の常識などを削ぎ落とすのが常です。論理の前に血も涙もない、一般の推理小説では許容されないような結論が出ることがある。
しかし削ぎ落とされた後に残った、残酷な、びっくりするような結論の中に、人間の弱さや哀しさが見える瞬間があります。それを探して、私は新本格ミステリを次から次へと読みました。哀しい色の宝石箱ばかり開けるように。……通学鞄を二段組のノベルスでいっぱいにしてね。おもに背表紙に犬のマークのついたやつ(講談社ノベルス)。
この本のページを開いて冷たい風に吹かれたとき、その頃の気持ちを突然思い出しました。
さて、これは中国の高校を舞台にした学園ミステリです。才色兼備な生徒会長のもとへ、友人から相談が持ち込まれます。五年前の冬の朝、校内で生徒の死体が発見された事件について。自殺として処理されたそれを、彼女たちは検証し始めます。当時の生徒であり現在は図書室に勤める、変わり者の司書の力を借りて―。
書き手はたいへん感度が高い。10代から20代前半の、忘れられそうなかぼそい希望と憂鬱を見事にすくい取って言葉にする。こういうことができる人がいてくれてうれしいです。すごい。それがこの作品を推理小説、かつ、繊細な青春小説にしています。
私は自分が生きたことがないこと、しかも永遠にほんとうに生きることはないかもしれないことに気づいた。
『雪が白いとき、かつそのときに限り』(陸秋槎)p.289上段より ※原文では「ほんとうに生きる」の部分に傍点あり
これは作中のある一人の台詞なのだけど、彼女だけではなく、多くの登場人物がこの問いを明に暗に考え続けている。この作品を象徴する台詞だと思います。あの、ハチャメチャな司書の姚漱寒(よう・そうかん)先生も。姚先生……こんな先生いたらぜったいみんなで絡みまくる。
あと、そうだ、アニメ化したらエンディングテーマはbermei.inazawa作曲が合いそう。よし、今のうちに言っておきます。bermei.inazawaがいいな。というわけで、イラストも心なしかそんなアンニュイで美しい感じを目指して描きました。上から姚先生、唐梨(とう・り、シルエットのみ)、生徒会長の馮露葵(ふう・ろき)です。

ところで、これは下塗りをホルベイン透明水彩で、キャラクターをコピックで塗っています。用紙はBBケント。水彩にもコピックにも使えておまけにマスキングにもそこそこ耐える、最強の画用紙なのですが、近年廃盤になってしまいました。なんてこった。
近いのだとコットマン(ヴィフアール)の細目になるのかな。でもコットマンって濃色がちょっと滲む。アルビレオは、まあできなくはないけど、コピックで色を重ねていくと紙の目が出てしまうので、厚塗りには向きません。軽く色つけるにはいいのだけど。
なんかいいのないだろうか。水彩とコピックが併用可能で、ついでにマスキングに耐えてトレスがしやすくてペン先が引っかからなくて主線がシャープに出て安価で手に入りやすいやつ(無茶)。




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