最初に出会った安倍晴明ものが、夢枕獏の本作だったので、晴明の隣には相棒・源博雅がいるのが私の中では自明になっています。
フィギュアスケーターが氷上で安倍晴明を演じたとき、それはそれだけで素晴らしい演技だったのですが、BGMの笛の音を聴きながら「これ、晴明さんの無事を祈りながら笛を吹いている博雅がいるよね……博雅も頑張ってるね……」と謎の感動をし、友人に爆笑された石井です。

夢枕獏の描く安倍晴明は、あまりに冴えわたっている。世界の理が澄明に見えすぎている。その才能と感性だけでもう人と鬼とのあわいに立っているような人が、独りきりだったとしたら、ひとの形を保てないでしょう。早々に世界の一部になってしまって、個人としては消えてしまう。そんな晴明という人に源博雅という理解者がいて、彼を一人の人間として認め支えた、という物語があまりにもしっくりしすぎて、もはやそうだと思いたい。
「よいか晴明」
夢枕獏著『陰陽師 生成り姫』文庫版p.93より
博雅は言った。
「いつかも言ったことがあるが、たとえおまえが人でないものであったとしてもだ、この博雅はおまえの味方だぞ」
史実では、安倍晴明も源博雅も平安時代の文献に名前が残りますが、文献の限りでは彼らに交流はありません。だからこれは、もしも、の話だけど。
夢枕獏の『陰陽師』は平安時代の陰陽師・安倍晴明が、親友の源博雅と、都におこる怪異を呪術で解決するシリーズです。

イラストは上段左から蝉丸法師、露子姫。中段左から博雅、晴明。下段左から道満、蜜虫ちゃんです。これでだいたいチーム晴明だ、と思ったけど、おにーさん(=賀茂保憲。晴明さんの兄弟子)を忘れてたー。この人もなかなか食えないひとで楽しいのです。おにーさんとお供の猫又、ごめん。またいつか。
そして、道満氏を描くのが楽しかった、意外に。実は好きなのでは?作品オールキャラ的なイラストを描くと、自分でも思ってもいなかったキャラクターがしっくり描けたりして驚きです。悪役とかも。むしろ主役に苦戦したりしてね。なんなんだろうあれは。
追記:ところで。引用したように、シリーズ内で何度も、博雅は晴明に友愛の情をわざわざ言葉にして表現します。わざわざ面と向かってです。たまに読んでいて照れるほど。これ、彼がそういうことを照れずにできるいいやつである、という読み方のほかにも、ちょっと深読みができます。
博雅はこうして、無意識に晴明に呪(しゅ)をかけているのではないかと。おまえはいい漢だなあ、おまえが大好きだよ、と声に出して言うことで、晴明が一線を踏み越えないように守っている。
そうだったらすごいな。すごい術者だな博雅。
だって効いてるよ。
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