『図書館へ行こう』(田中共子)―いちばんやさしい本の狩り方

 としょかんだいすき石井菱砂です。年末は図書館に関する本を集中的に読んでいました。もちろん図書館で借りて。
 その中に、岩波ジュニア新書から出ている『図書館へ行こう』(田中共子著)という中高生向けの手引きがあります。これは、本を能動的に読み始めた子ども、図書館に通い始めた子どものために書かれたものです。 

 新鮮です。私はもう図書館にはなたれて自分で本を狩るようになってから20何年もたっていて、当たり前すぎて忘れていたことがたくさんある。たとえば、物語を読み慣れてない人は、性別や年齢、境遇が自分と似ている主人公のほうがその世界に入り込みやすい、とか。
 えー、もうとっくのとうに忘れてしまったよそんなこと(私は時々、中世ヨーロッパの年若い修道士だし、厄介な友人を持つ壮年の平安貴族だし、かと思えば学校も家にも居場所がない12歳になったばかりの女の子だ)。でも確かに言われてみればそう、昔は、自分と似た境遇の主人公のほうが読みやすかったかも。
 自分と似ても似つかない人の物語に没頭できるようになるためには、「知らない人を理解しようとする」力がある程度ないとできないことなのです。その力は、乱読によって養われる。だからまあ、図書館に通うような子どもは数年でそのようになります。そして最初の狩りの記憶を忘れるのです。

 一方、大人が読んでも知らなかったこともたくさんあります。図書館の選書の基準とか。あれは、単に古くて借りられない本を捨てて、新しいのを補充していくだけじゃないんですね。
 図書館で、ある分野の本の棚をよく見ると、その分野の初心者向けから上級者向けまでの本がバランスよくそろっているようにしてあります。どのレベルの読者が来ても困らないように。そうすると、極端な話、その分野の棚の本を全部さらってくれば、入門から最先端まで独学でステップアップができます。しかも無料です。
 図書館って、図書館って、なんて偉大な発明なんだろう。
 これを読んでから、もちろん図書館学の棚(NDC分類010台)をさらいました。大漁でした。

 と、私はこの本を大人として楽しんでいたのですが、

 おとなになっていくと、いろいろな経験をします。わくわくする本との出会いも少なくなってしまいました。目を通しておこう、という本ばかりつぎつぎに出て、何度も読みなおすこともあまりありません。

田中共子著『図書館へ行こう』p.105より

 だそうです。そうか……いや、そうか?そんなことないぞ?
 「わくわく」、というか、心を揺さぶられる本をとっさに10冊挙げてみたら、そのうち4冊はここ数年以内に読んだ本でした。しかも最近読み直した。

 ……私、もしかしてひまなのか。子ども並みに。

本の紹介雑誌風イラスト

 これは私信です。「最近読んで好きだった本など」。どれもこのブログで記事を組んで紹介したい本ばかりです。とっさに挙がらなかった本も、好きでなくなったわけじゃなくて、今、意識に上ってきていないだけです。また思い出します。好きなものも、衝撃的な出会いも、年を重ねるごとに増えていく。

 私が図書館で本を狩り続けるかぎり。

 遅くなりましたが、2021年も寒宵堂をよろしくおねがいします。

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