本の話

『Omegaの視界』(閂夜明/天村血花)―闇の生物学

すべての生物は他の生物や環境との関わりを通じて、生存をはかる。 さて、二つの生物種が同じ生態的地位、限られた同じ資源、同じ空間を占有するとき、この二つの種は仲良く共存するだろうか。 まさか。ゾウリムシとヒメゾウリムシは同じ水槽で共存しない。...
カード

晴明と博雅(残暑お見舞い2023)

残暑お見舞い申し上げます。 立秋を過ぎると、夏も、猛々しいだけではなくて、少し哀愁を帯びてくるのが味わい深い。 いや、実を言うと描いている途中で残暑見舞になることが確定した(=暑中見舞の期間に間に合わないとわかった)ので、ちょっと焦りました...
本の話

『夜啼く鳥は夢を見た』(長野まゆみ)―深泥の睡り

夏のさかり、祖母の家で休暇を過ごすため、紅於(べにお)と頬白鳥(ほおじろ)の兄弟は沼のほとりにやってきた。「この沼には子供が沈んでる」と従兄の草一は言う。しかし幼い頬白鳥は、兄や草一の止めるのも聞かず、水蓮の咲く沼にたちまち惹きつけられる。...
イラスト

夏至、薄水青のリボン

今日の日没は午後7時18分。ここ、北の町では、薄明の時間が長く続きます。 この時期になると読み返したくなる長野まゆみの『夏至祭』より、黒蜜糖です。(可愛く描きすぎたかなー、と思いつつ、『夏至祭』の黒蜜糖は私の中ではこんなです。溌剌としている...
本の話

『狩人の悪夢』(有栖川有栖)―いつか夢の果てるまで

推理小説家の有栖川有栖は、悪夢をモチーフとする人気ホラー小説家の白布施と知り合いになり、山奥にある彼の自宅に招待された。しかし、一夜明けて近隣の住宅で不審な死体が発見される。その首は矢で横ざまに貫かれていた。 犯罪学者の火村英生と、著者と同...
紀行

湿地展に行ってきたレポート

札幌市の北海道博物館で開催された「あっちこっち湿地」展(2023年2月25日-5月28日)に行ってきました。 湿地好きとしては、普段やっかいものになりがちな湿地が、特集されて親しみやすく展示されているというだけでも嬉しい。本で読んだことしか...
本の話

『湿原力 神秘の大地とその未来』(辻井達一)―湿原の王国

湿原にはまるつもりはなかった。はじめ湿原に興味はなかったのだ。 多くの人にとって湿原は「夏が来れば思い出す、はるかな」場所であり、夏が過ぎればまた忘れてしまう。私もそうだった。 ところがあるとき、一冊の本が私を湿原に引き寄せた。 地球上の水...
画と画材の話

実践マスキング(または現代の蝋抜き職人)

マスキングが好きです。マスキングがビシッと決まったときの爽快感たるや。 マスキングというのは、白く残したいところをテープや特殊なゴム状のインクで覆って保護し、絵具がつかないようにすることです。上の写真では花の部分をホルベインマスキングインク...
周年記念記事

寒宵堂五周年

先日、机の整理をしていたらこんなものが出てきました。  まだ寒宵堂を立ち上げる前、Webという場所でなにをやろうか考えていた時のメモです。2018年当時、既にTwitterやPixivなどのSNSが全盛であり、個人ブログは勢いを失っていきつ...
本の話

『超少年』(長野まゆみ)―ヴァイオレットの向こう側

どうして菫色なんだろう。そういえば。 長野まゆみの小説にはたびたび菫色のモチーフや、菫色の瞳を持つ少年が登場する。私の記憶にとりわけ印象的に残っているのは『テレヴィジョン・シティ』に出てくる才気煥発な少年、イーイーだ。彼の瞳は菫色で、彼が訳...