湿地展に行ってきたレポート

 札幌市の北海道博物館で開催された「あっちこっち湿地」展(2023年2月25日-5月28日)に行ってきました。

 湿地好きとしては、普段やっかいものになりがちな湿地が、特集されて親しみやすく展示されているというだけでも嬉しい。本で読んだことしかないあれこれを実際に見られるのもいいところ……ですが、いかんせん個人的に外出がしんどい。本数の少ない特急にものすごい金額をとられるのも札幌の人ごみのなかに出るのもいやだ。引きこもってたい。だが、湿地展、湿地展だぞ……。

 JR森林公園駅って全然森林ないよー、これ都会だよ、と思いながら下車しました。

ダウリアチョウザメ、泥炭層、モウセンゴケ、ミズゴケ

 (画像は左上から時計回りに、ダウリアチョウザメ、泥炭層、モウセンゴケ、ミズゴケ)

 前半は、湿地に暮らす鳥や虫の標本のスペースがあり、鳥好きのグループ、虫好きのグループの人たちがそれぞれ展示を囲んでにぎやかに過ごしていました。そうか、それを見に来た人もいるのか。
 私は泥炭層を見に来た人なので、ちょっと詳しくないなあと思いながらも、マガモの首の翠色の鮮やかさに見とれたり、大きなダウリアチョウザメの剥製のそばで心地よくぼんやりしたりする。
 チョウザメはかつて石狩川や天塩川など北海道の大河に遡上した記録があるけれど、現在では北海道生まれのものは絶滅しています。古生代から形が変わっていないいわゆる古代魚で、速く泳ぐのはあんまり得意ではない。上下非対称な尻尾をゆったりと振りながら、川底の獲物を睥睨しているところを想像しました。良いです。泳いでいるところを見てみたい。

 後半はかつて日本最大の湿原だった石狩大湿原の開拓と、北海道の湿地について。タイトルは「消えゆく石狩大湿原」です。すごい。石狩川の治水と湿地の干拓については、北海道の開拓の努力の成果として取り上げられることが多いのだけど、このタイトルは湿地の側に立っています。さすが湿地展だ。

 前回の記事で取り上げたように、開拓者は氾濫する石狩川を治水し、湿地を干拓しましたが、それだけでは農地を作ることができませんでした。さらに表層の泥炭層を除いて客土をおこない、徹底的に湿地を改良しました。そうして石狩大湿原はほぼ消え去ったのです。
 農業にとっては厄介な泥炭層でしたが、乾かした後は燃料として利用することができました。泥炭をくべて暖をとる「泥炭ストーブ」が辻井達一著の『湿原力』の中で紹介されていました。

泥炭ストーブ

 これだ。調べても出てこなかったんです。本物が見られるなんて思ってもいなかった。

 展示の最後は、北海道各地の湿地の現在の取り組みについて。漁業や農業に湿地が生かされていることについて。ペダルを踏むとウイルキーの燻煙に使う泥炭の香りが漂うコーナーがあって、踏まずにはいられなかったです。
 保全するだけでなく、湿地を湿地のまま利用すること。湿地が消えたら成り立たない環境や生態系があります。しかしそれだけではなく、人間が北海道で、湿地がなければ成り立たない産業や文化を築いてきました。今はもう、湿地を消し去ろうとはだれも思っていません。たったの150年です。150年でここまで時代が変わるとは。

 150年後にはチョウザメが悠々と石狩川を泳ぐこともあるかもしれない。

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◆私を湿原好きにした本について。

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