周年記念記事

寒宵堂六周年

<存在しない人間の似顔絵を描き、存在しない時間に、確かにあったように固定すること>「本を読んでイメージイラストを描くのが趣味です」と言うと、たいていの人に首を傾げられます。そういう趣味が世に存在すること自体、あまり知られていないのです。 描...
本の話

『北見隆装幀画集 書物の幻影』(北見隆)―語られるべき謎たち

しんとした画面の中では、簡素なシルエットの人間が、凍りついた顔でたたずんでいる。それが羽の生えた天使だったり怪物だったりすることもあるけれど、画面の中はいつも静かだ。その静けさの中、これから何か不穏な事件が起こる予感に満たされている。あるい...
画と画材の話

消しゴムはんこ(一角獣)

消しゴムはんこを彫ります。 ゴム版はSEEDの「ほるナビ」です。大きな文房具店に行くと、はがき大サイズが700円くらいで売っています。表層だけに色がついていて、彫ると白いところが見えるのでわかりやすい。 線画を描いて、濃い鉛筆(Bや2B)で...
本の話

『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』(マイク・ヴァイキング)―冬ごもりのために

ヒュッゲ(Hygge)。デンマーク語である。 日本語訳は難しい。「ささやかながら満たされた幸福な気分」、また「そのような気分にさせるものごとのさま」といったところだけど、本を一冊読んでも、ヒュッゲは、ヒュッゲであるとしか言いようがない。イラ...
カード

クリスマスカード(アビと宵里とコンパァトメント)

今年のクリスマスカードです。長野まゆみ著『天球儀文庫』より、アビと宵里を描きました。 クリスマスの朝、特急プロキオンのコンパァトメントを占領して休暇に向かう二人です。宵里はカードゲーム強そう。相手のスキをついていきなりあがりそう。 短編“夜...
本の話

『十一月の扉』(高楼方子)―物語は導く

十月の末にハロウィンが終わると、早くも街は十二月の準備を始める。クリスマスに向けてである。 毎年、ちょっとせわしなさすぎるんじゃないか、十一月はどこへ行った、と思いながら、それでも、きらびやかな缶に詰められたお菓子やクリスマスフレーバーの紅...
図書館の話

おしゃれして図書館に行こう―または「ただの人間」スタイル

ひとりで図書館に行くとき、いちばん純粋に、ただ自分が着たい服を着ています。(イラストは数年前の私信より。実際に図書館に行ったときの服の記録です。) とにかく服を着るのは難しい。 仕事に行くなら信用されそうな服を、遊びに行くなら行き先に合わせ...
画と画材の話

錦秋(聴くくらいしかできないけどさ)

秋になると紅葉を描きたくなります。錦秋、という言葉を考えた人はすごいな。 下描きのときは口を結んでいたのですけれど。 これ誰が手前にいるんだろう、友達かな、と描きながら想像が膨らんできて、話聴くよ、聴くくらいしかできないけどさ、としゃべらせ...
画と画材の話

図解イラストエッセイと手書き文字

機能と構造がよくわかる精密な図解イラストが好きです。一方で、作者の心の動きが伝わるエモーショナルなイラストエッセイも好きです。 その二つの魅力が合体した「図解イラストエッセイ」と呼びたいようなものがあり、これがいっとう好きなのです。速水螺旋...
本の話

『サマー/タイム/トラベラー』(新城カズマ)―未来がこちらへやってくる

昔の友達に再会したみたいだった。 私が『サマー/タイム/トラベラー』を初めて読んだのは中学の時だ。鶴田謙二の表紙イラストの、不思議なたたずまいの女の子に惹かれて手に取った。作中の彼らは年が近くて、私と同じように本が好きな彼らを、友達だと感じ...