マスキングが好きです。マスキングがビシッと決まったときの爽快感たるや。

マスキングというのは、白く残したいところをテープや特殊なゴム状のインクで覆って保護し、絵具がつかないようにすることです。上の写真では花の部分をホルベインマスキングインクでマスキングしています。
もちろん彩色のときに塗り残してもいいのだけど、時間と注意力が要るし、なによりマスキングが好きなのでマスキングしちゃいます。うははは。
白く残したいところを保護するほかに、絵具の境界線を強く出したいときにも使います。

これはマスキングテープで色を付けたい部分を囲ってから塗ったものです。マスキングテープの厚みで絵具の粒子がせき止められて乾くので、境界がはっきりします。パキッとする。筆で塗っただけではなかなか出せない効果です。
ところで、なぜテープがところどころ浮いているかというと、テープと紙が接触するのを最小限にするためです。紙の種類にもよりますが、マスキングテープを剥がす時に紙の表面まで剥がれてしまうことがあります。なので、最小限必要なところだけ圧着しています。あとは、テープを1回自分の腕に貼って剥がし、粘着力を落とすという手もあります。紙は一般的なマルマンの画用紙くらいだと剥げそうでハラハラするので、少なくとも水彩紙でやるのが安全です。コットマンはできます。モンバルキャンソンなら無敵です。
マスキングインクが筆にくっついて取れないこともあります。なのでマスキング専用の筆を用意し、事前に筆に薄く石鹼水をつけておくとよく……
いや……待て、そこまでしてマスキングしたいのか。
ちょっと我に返りました。
できなくても困らない技法ではあるのです。やらないときもあります。
江戸時代、伊万里焼の技法にも同じようなものがありました。
蝋抜きや墨弾きといって、そこだけ釉薬が載らないようにする、まさにマスキングです。流行したらしい。江戸時代の職人も「鷺がきれいに抜けた!」なんてやってたかと思うと親近感です。
鷺ならまだわかります。でも、ぐるぐると渦巻く複雑な蛸唐草文様を白抜きする、通称「逆タコ」なんてものもあり、これはもう、マスキングが楽しかったんでしょう。楽しくなければ思いつかない。
マスキングに魅せられる人間はいつの時代もいる。
さあ、剥がすぞー。わくわく。
インクを剥がして、花びらの影を描きこみ、出来上がり。
春です。

『東京ミュウミュウ』(作画:征海未亜/ 脚本:吉田玲子)より桃宮いちごでした。
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◆『スーパードール・リカちゃん』(征海未亜著)を貸してくれた友人に宛てて描いたもの。ノブレス・オブリージュって王さまでも最初からできるわけじゃないよね、という話をしてました。




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