本の話

『海南小記』(柳田国男)―民俗学者とバカンスへ

職場のエッセイで「民俗学、特に柳田国男が好き」と、ちらっと書いたら、思いのほか内外から反響がありました。書いてみてよかった(周囲には見渡す限り理系出身者しかいないし、私も理系です)。 「柳田国男なら知ってるよ、『遠野物語』とかね、読んだこと...
画と画材の話

プレイアデス舞曲集(透明水彩)

水彩の技法のひとつで、バックランという、多めの水で絵の具の粒子を追いやって作るにじみがあります。上手くいくと、紙の上に花火が広がったようできれいです。下に塗った色の湿り具合や、筆につけた水の量、画用紙の目などに左右されるので、上手くいかない...
本の話

『樹上のゆりかご』(荻原規子)―ゆりかごゆれる季節

息をするのも許されない緊張のなかで、物語が始まる。張り詰めた静寂が耳を聾する。あたりは暗闇。不安と高揚が同時に肌をびりびりさせる。押し出されるように、前へ。 これは、奇跡的なバランスで成り立つ、一度きりの夏の話だ。 絵を描くのに細部を確認し...
コラム

時間の止まった中庭

前回取り上げた『メメント・モーリ』(おのりえん著)のなかで、主人公たちが、時間の止まった王宮の中庭を抜けていくシーンがあります。噴水とタイルで彩られた、草木には手入れの行き届いた、けれど夢の中のように現実感がない中庭です。彼らはその静けさを...
本の話

『メメント・モーリ』(おのりえん)―自らの力で

鬼の国には“十年儀式”という儀式がありました。 鬼の国で十年を過ごした者は、十年目の“誕生日”を国中の鬼たちから祝ってもらえます。儀式の中で、十歳になる鬼の子どもは、自分が何者になりたいかを宣言します。それによって正式に、一人前の鬼として国...
周年記念記事

寒宵堂三周年

夜更けに、仕事がこないので職場で本を読んでいたら、退勤する同僚が「いいですね、読書ですか」と声をかけてきたことがありました。あ、しまった、と思って顔を上げたら、彼は穏やかに笑ってこう続けました。「石井さんが読書をする姿には、安心感があります...
本の話

『古代の朱』(松田壽男)―魔的な赤

なんて美しい朱(あか)だろう。心をざわめかせる。 私は顔彩という日本画絵具をよく使います。顔彩を使っていると、日本の伝統色とその由来には意識的になる。それでも、「朱」と言われてまず思い浮かぶ色は、神社の鳥居の色でした。赤みの強いオレンジ色で...
画と画材の話

王女とその騎士(コピック)

友人から、征海未亜の『スーパードール・リカちゃん』を借りて読んでいた。 これは幼年少女漫画誌 “なかよし”に連載されていたのだけど、貸してくれた友人は「上に立つ者はそれなりの責務があるって話でね!」と熱弁する。 ほんとにノブレス・オブリージ...
本の話

『図書館へ行こう』(田中共子)―いちばんやさしい本の狩り方

としょかんだいすき石井菱砂です。年末は図書館に関する本を集中的に読んでいました。もちろん図書館で借りて。 その中に、岩波ジュニア新書から出ている『図書館へ行こう』(田中共子著)という中高生向けの手引きがあります。これは、本を能動的に読み始め...
本の話

『マリア様がみてる』シリーズ(今野緒雪)―私たちはいつでも真剣

今年2020年のクリスマスカードは『マリア様がみてる』(今野緒雪)にしてみました。聖歌隊です。左から聖さま、祐巳ちゃん、祥子さま。 復活祭やクリスマス前になると、聖歌隊は定期メンバーに加え増員をかけます。別に歌がうまくなくていい。狙うのは練...