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本の話

『家守綺譚』(梨木香歩)―ジョバンニの往還

友人は、湖にボートで漕ぎ出し、行方を絶った。 駆け出しの物書き・綿貫征四郎は、空き家となったその友人の実家に、家守(いえもり)として住まい始める。 百年ほど前、のどかな疎水べり―琵琶湖疎水が、都へ向かっていく手前の、山のふもとの土地での出来...
イラスト

家守綺譚らくがき

梨木香歩の『家守綺譚』のイラストを描いています。 描きながら、NHKのラジオドラマ版を流していました。水辺の音がちゃんと再現されていて雰囲気があります。家のそばを流れる疎水の音や、高堂が漕いでくるボートのオールが水を跳ね上げる音が心地いい。...
寒宵堂雑記

万聖節の灯

とうにお菓子がもらえる歳じゃない。でも、ハロウィンが近づくとなんとなくわくわくしてしまう。街に、オレンジ・紫・黒というあの妖しいカラーリングがあふれるのも愉快だ。 愉快だけれど、クリスマスや復活祭がどこまでもよろこびに満ちているのに対して、...
本の話

『ギリシア神話』(石井桃子編)―いちばん低い音の弦

ああ、この表紙だ。この、テラコッタ色の表紙。なつかしい。 これは、私が初めて「ギリシア神話」にふれた本です。 なぜ、“ももたろう”や“シンデレラ”を差し置いて、『ギリシア神話』がいきなり子ども部屋の本棚に用意されていたのか不思議ですが、たぶ...
本の話

『ルナティックス 月を遊学する』(松岡正剛)―月がとっても青いから

月だ。月だらけだ。めくってもめくっても、月ばかり現れる。 こんばんは。これは松岡正剛の、月にまつわるエッセイ集です……そんな穏当な紹介では表現しきれないくらい、月の妖しい魅力がぎっしり詰め込まれていて、今にもページがびかびかと発光しそうだ。...
イラスト

夏の終わりの絵日記

今年の夏は、楽しみにしていたシリーズ物の新刊が出たので幸せだった……ちょっと待って「幸せ」ってなんだろう。読後に力尽きて燃えがらになるところまで「幸せ」って言うかな。言うんだっけ。 すさまじかったです『機龍警察 白骨街道』(月村了衛著)。死...
本の話

『球形の季節』(恩田陸)―夕焼け色の哀しみが町を覆う

ひとつの町がある。 場所は東北地方のどこか。古くは交通の要衝として栄え、往時の面影を残す町並みがところどころに残っている。特徴と言えばそのくらいだ。小さな市街地のほかは一面の田んぼが広がる、眠ったような町で、三方を蛇行する川に、残りの一方を...
イラスト

山の日らくがき(合田刑事)

海と山なら、どちらかというと山のほうが好きです。 しかし、山ならどれとも仲良くやっていけるかと言われると、そうではない。気の合わない山もある。といったらおかしいけれど。 山にも性格がある気がする。 見た目や気候、それが抱える生態系、長年にわ...
ブックリスト

本に人生なんか変えられたくない人の夏の文庫フェア

夏だ。夏と言えば文庫フェアだ。 この邪悪なパンダの小冊子は何かというと、友人に「読んだあと虚脱するほど衝撃を受けた本があるでしょ?そういう本の話をしてほしい」と言われたので手作りしたものです。ちょうど季節だったので、夏の文庫フェア小冊子風に...
寒宵堂雑記

北海道の夏は

朝起きたらしとしとと雨が降っていたのでがっかりしたが、午後からは晴れ間が出た。空気が澄みわたり、丘の向こうまで、夕日に照らされてはっきりと見通せる。こんな日は早めに夕食をしたためて、イエイツの『ケルトの薄明』でもめくりながら、長い夕方をのん...