前回の「学校は異界」という記事を書いていた時に、なんだかそんな作品はほかにも知ってるな、と思っていたのがこれです。
知ってるな、と今とぼけましたが、実は大好きな作品です。何度も読み返してます。
高い塔のある厳格な修道院学校で日々、刺繍を学ぶ生徒たち。その一人である少女・ニコルは「すべてを受けいれよ。疑問をいだくのをやめよ」の教えを守り、暮らしていた。しかし、ある日やってきた不思議な猫に導かれ、学校の恐ろしい秘密を知ることになる。
…うん、こういう場合、秘密はたいがい恐ろしいものです。
少女の自立、という定番のテーマを扱っていつつ、それ以外のところの読みごたえがちゃんとある児童書です。悪夢好きとしては、降りても降りても着かない階段、眠る鳥たちなど「恐ろしい」部分を延々と読んでいたい。
あと、これ、“名前” を探す話なんじゃないかな。
物語の中で「名前を当てる(取り戻す)」場面が何度か出てきます。
“名前” って、文字だけじゃなくて、「記憶」だったり「自己決定権」だったり「自分が何をするべきかの認識」といういろいろなものがぞろぞろくっついてきて非常に面倒で……大切なものです。
自分が何者で、この世界において何をするパーツか、というのが見えていないと(あるいは見えていると思っていないと)人間はなかなか生きられない。
でも、どうやら、生きながら何度も失くすし、何度も得るんだな。
だからこれは、一度名前を得たはずの大人が読んでもやっぱりおもしろい。
猫は部屋のすみずみをかぎまわると、ひょいとベッドに飛びのった。「オレさまの名前をあててみな!」と猫が言った。
小森香折著『二コルの塔』p.51より

以前雑誌に(かつくら2015春号)載せてもらったもの。
静謐な感じを出したい、と思って手持ちの「静謐な感じの表紙の本」を見ていて、余白を大きくとるとよいことを発見したのでした。ちなみに見ていたのは『博士の愛した数式』(小川洋子)と『蛇行する川のほとり』(恩田陸)でした。

しまった、Nicoleだ。
【関連記事】
◆この小説のモチーフとなったレメディオス・バロの画集について。
◆2020年5月のラジオドラマ版再放送に合わせて描いた、ニコルとシダ猫のサルヴァドールのイラストです。
◆選書と、二コルとサルヴァドールの水彩イラストがあります。
◆ザザやシオンなど、登場人物の水彩イラストをまとめました。








コメント