『ニコルの塔』を取り上げたからには(以前の『ニコルの塔』(小森香折)―名前をめぐる冒険という記事です)物語にかかわっている画家のレメディオス・バロのことも書いておきたい、と思っていたのでした。
レメディオス・バロ(1908-1963)はスペイン出身、のちメキシコに亡命して活躍したシュルレアリストです。いえ、シュルレアリスムの影響を受けた画家、という表現のほうが正しいか。
『百年の孤独』(ガルシア・マルケス)の表紙、とか『月ノ石』(トンマーゾ・ランドルフィ)の表紙と言ったら、ああ、あれ、となる方がいるかもしれませんね。
レメディオス・バロ ≪螺旋の路≫(1962年、メゾナイトに油彩)が使われています。
こちらは≪星のピュレー≫(1958年、メゾナイトに油彩)です。
ほかにもちくま文庫のアンソロジー『短編小説日和 英国異色傑作選』の表紙にも使われてました。わあ、ほしい。
バロが画家としての知名度の割に(と言ってはなんですけど)本の表紙に使われるのは、見る人が想像力を「遊ばせる」ことができる絵だからでしょう。この奇妙な建物何に使うんだろう、とか。この機械はどうやって動くんだろう、とか。その世界に地続きに入っていけるような気がする。
たとえばダリやマグリットの作品はもっと空気がピリッとしていて、作品と観る人の間に厳然とした距離があるような気がしますが、バロの作品は日常の延長にちょっと開いた奇妙な世界です。
さて、『ニコルの塔』(小森香折)を読んでバロの作品を見たくなったなら、まずこの画集です。
まず、と言っておきながら絶版なんですが。
でも、日本で出版されているバロの画集は結局これしかないのではないかな。私は道立図書館から貸してもらいました。
図版はカラーが多くてきれいです。もちろん、『ニコル』のもとになった≪塔に向かう≫ ≪地球のマントを刺繍する≫ ≪逃走≫ の三部作も載っています。
バロ本人についてもかなり詳しい資料です。当時の芸術の新風、華やかな(苛烈な?)交友関係に翻弄されつつ作風を築いていった彼女の様子がわかります。
「ウランガ」ってバロの母方の苗字だったんですね(※『ニコルの塔』で主人公のニコルを助けてくれる老婆の名前がウランガ)。「ニコル」という名前もよく読んでいくと発見できます。男性ですけれど。
他に図版がきれいにみられる本としては、雑誌 “MOE” の1999年11月号があります。その年に行われたバロの回顧展の特集をしています。雑誌のバックナンバーを長くとっておいてくれる図書館だとあるかな。
私がバロを知ったのはこの特集がきっかけでした。当時、何度も何度も眺めたので記憶の中では扱いが大きかったんですけど、大人になってからもう一度手にしたら、たった数ページの小特集でした。なんと。
そう、そこで脳裏に焼き付くほど見ていたので、その数年後、図書館の棚に背表紙だけ見えていた『ニコルの塔』を「なんだかバロっぽい」と引き当てることができたのです。
細い糸同士が引きあった、今思うとなかなか得難い出会いでした。
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