吹雪のなか教会の灯りがまたたく。質素な身なりの人たちが集まってきて、歌い始める。初めは細い声で。
祈りの歌声は、次第に吹き上げるように大きくなっていく。天にも届くように……

本を読んで絵を描く以外にも、音楽を聴いてCDジャケットを作成することがあります。
音からのイメージ、というよりも、曲を聴いたり背景を調べたりしているうちに浮かんでくる光景やストーリーがある。物語に寄せる絵、という点では、やってることはいつもと変わらないのかもしれない。
音楽が音源データで手に入るようになったことの利点として、個人的には「ジャケットつくっていい」をあげたいと思います。絵を描く人や写真を撮る人たちが、好きな曲のCDジャケットを自由に作ってプレゼントするのが流行ったら楽しい。
“徹夜祷” はラフマニノフ作曲の合唱曲。晩祷、とも呼ばれる。ロシア正教の祈りの歌です。
旧ソ連政府は1917年の革命から1980年代までロシア正教を弾圧し、宗教音楽の演奏を禁じていました。スヴェシニコフ指揮・ソビエト国立アカデミーロシア合唱団演奏のこの録音は当時(1965年だったかも)、例外的に許可されたものです。
私がもし、当時の合唱団員だったら、気が気でなかったでしょう。体制側の合唱団ではあるけれど、明日には方針がくつがえって演奏は中止になるかもしれない。それで済めばいいけれど、最悪、家族もろとも捕まるんじゃないかとか。そういうことを考えながら、練習したんじゃないか。
この録音にはそういう状況を想像させる異様な迫力がある。近年になって響きの美しい録音がたくさん出ていますが、これのエネルギーにはかなわない、と思ってしまうような。

裏面も作りました。正教の言葉遣いは独特で、文字を入れながら写経のようだと思ったりしてました。表紙に使ったフォントはoradano明朝といって、明治時代の活字をもとにしたフリーフォントですが、さすがに裏面では出ない文字があったので、素直に普通のフォントに変更しました。
しかし、oradano明朝、祷の旧字が出ただけでもすごい。ほかにいつ使うんだこんなの。
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