北海道夏手帖

 北海道って夏は涼しいんでしょう、と本州の方に言われるたび、いつも「ええ、まあ……」とあいまいな笑みを返すことしかできない。観光への期待を裏切りたくない精一杯の誠意だ。

 ついに、ああついに、今年こそ言ってしまう。

 北海道の夏はたいして涼しくない。

 確かに、本州に比べて湿度は低いし、朝晩の気温は下がる。
 しかし、気温が上がる地域は容赦なく真夏日になるし、なによりその状況下でクーラーがない家のほうが多いのだ。そして外に出れば、遮るもののない直射日光が降り注ぐ。本州から来た客人に「北海道なのに暑い……」と何度言われたかしれない。がっかりを分かち合うしかない。

 先日私も暑さにやられて食欲がなくなり、朝ごはんにプラム、昼ごはんにアボカド、という樹上の類人猿のような生活をしたばかりだ。

 ただ、それでも時折は爽やかな日があり、その爽やかさは、「北海道って夏は涼しいんでしょう」と言うときの人の、あの期待のこもった笑顔にかなうものだ。

半袖のパジャマで扇風機の風に吹かれる

 これは本州に住む親戚にあてた葉書で、ホルベイン透明水彩とステッドラーのカラトアクェレル水彩色鉛筆で描いたもの。
 北海道の夏の最良の一日は、色にすると、やさしいミントグリーンになる。
 そしてこのミントグリーンの季節は、あまりにも駆け足で過ぎ去ってしまうので、描き残しておきたくなるのだ。

コメント

  1. 狗神 より:

    以前、東京と北海道(江別市)を月に2〜3回行き来していた時期が4年少々ありましたが、確かに、物件備え付けのヒーターはあれどクーラーはありませんでしたね。
    いも餅にハマってしまい、札駅まで往復する度に最寄り駅近くの同じ店舗で毎回購入していたものだから顔を覚えられ、新商品開発に参加させて頂いたり、看板ネコの出産に立ち会ったり、北海道は思い出の多い懐かしくもほろ苦い場所です。

  2. 石井 より:

    >>1
     過ぎ去った土地のことを思い返すとき、そこで過ごした時間がどんなに苦しくても、わずかに甘い、郷愁のような気持ちがある気がします。コメントありがとうございます。
     なんと、いも餅をご存じとは(ここを読んでいる知らない方のために言うと、北海道の郷土料理で、みたらし味のジャガイモでんぷんの団子です。食感は、まさにハマるという表現になります。なんというか、むちむちしている)。
     私はこれを見ると、文化祭を思い出します。

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