『詩はどこに住んでいるか』(天沢退二郎)―詩人と散歩に出る

 これは詩人、童話作家である天沢退二郎のエッセイ。
 実は“現代詩手帖”に詩論として連載されていたものですが、天沢先生が千葉市周辺を歩き回った描写がそのまま比喩になって現代詩のことを論じているという・・・一風変わった本なので、ぱっと見はエッセイです。

 そんなわけで、数年前読んだときはこの本をどう読めばいいのかわからなかったのですが、最近になって読み返してみたら少しとっつきやすくなっていました。
 なんのことはない、いつもの天沢作品を読むときのような調子で読めばいいのです。
 描写されていることはそのままの意味ではない。そこに描かれている街は本当は街ではなく、人は本当は人ではない。

 しかしまあ、そこまで解釈に一生懸命にならなくても、オレンジ党シリーズの読者なら、物語の舞台裏をのぞくような楽しみがあるのじゃないかな、と思います。
 あの「六方野原」も「山王」も「五辻」(五差路)も実際の地名として出てくる。
 その実際の場所がどういう風に見えていて、どういう風に象徴化されて、物語の中に出て行ったのか、ちょっと気になりますからね。

 ところで、五辻といえばオレンジ党シリーズで

そう、正確にいうとそこは五辻になっている―というのは、十字路からななめ左、北東の方角にほそい石ころみちがまっすぐ草原の中へのびているからだ。ルミが最初の夢の中で行ったのはたしかにその小みちなのだった。

天沢退二郎著『魔の沼』p.17より

 という、不吉な予感が印象的な描写があります。ここ好きです。
 なんでそういう道行っちゃうかな・・・って。
 でも、私が子どもでもきっと、「草原の中へのびている」細い道を行くだろうなあ。均されてないところ、文明の力が及ばないところに、世界の秘密が住んでいるような気がしてね。

五辻に立っているルミ。

 クロッキー帳にヌーベルのパステルでした。

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◆オレンジ党のエルザとルミのイラスト、あとちょっとおまけ。

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