灯りを携えて夜中の図書館を歩き回りたい、という夢が昔からありました。
たぶんこの空想の発端は、禁帯出の魔法書を借り出しに行くJ.K.ローリングの『ハリー・ポッター』シリーズだし、決定打は、迷宮になった図書館に忍び込むウンベルト・エーコの『薔薇の名前』でしょう。天沢退二郎の『光車よ、まわれ!』に出てくる「夜間閲覧室」もそうかも。
大学に入ってその夢は叶い、試験期間中でもないのに深夜に図書館に出かけて行っては書架をふらふらとしたものです。必要最小限の灯りをつけて、しん、とした夜中の図書館を歩き回る。閲覧席の卓上灯を灯しての静かな読書。楽しかったなあ。楽しすぎてもちろん勉強ははかどらなかった。でも今思えば、あれが、この「寒宵堂」の着想になっている気がします。

話は少し変わりますが、奥に魔境が広がっている図書館も好きです。なぜか図書館に川が流れてたり勝手に人が住んでたり、だれも全体像を把握できないようなめちゃくちゃな図書館。フィクションの世界には時々出現します。
奥が原生林になって異界とつながっている、ミハル・アイヴァスの『もうひとつの街』の図書館。漫画だと佐藤明機の『ビブリオテーク・リヴ』は魔法で増改築を繰り返してダンジョンのようになった図書館で、めちゃくちゃな割に妙に居心地がよさそう。図書館の話ではないけれど赤松健の『魔法先生ネギま!』の学園図書館も、本の借り出しには困難を極めるサバイバルな図書館です。図書館探検部があるんだ。
イラストは、「一筋縄ではいかない危険で面白い本」を集めて紹介したペーパーの挿絵でした。これでもかと長年の夢を詰め込みました。これは、図書館には秩序と同じくらい渾沌が隠れていてほしい、そんな夢かも。



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