好きな本について、「好き」と同じくらいの強さで、いつも「なぜ?」と思っています。なぜ幸福だと感じるのか。あるいは、なぜ今でも恐ろしいのか。なぜ本当にあった話のように感じるのか。なぜ別の話をしているように感じるのか。
私は好きな作品とのあいだにかってに問いを立てては、探索し、答えていくことを飽かず繰り返してきました。そうやって作品と長く親密な時間を過ごすのが、昔から幸せでした。
最近になってテクスト分析や批評のやり方をおぼえて、手数を増やした感はありますが、基本的にやっていることは同じなのです。「わかりたい」と思うこと。「近づきたい」と思うことです。

(上はいつも分析をするときに使っているメモの一部です。作品の本質に迫ろうとする問いが「大きな問い」だとしたら、そこに向かう足掛かりとなる「小さな問い」の例)
問いを立てて解くやり方で作品に近づくとき、どんなにこちらが問いの立て方を用意してきても、最後は作品の方から手助けが来て、視界がひらける気がします。

その瞬間がとても好きです。

おかげさまで寒宵堂は七周年を迎えました。
開始当初はおずおずとイラストを載せていた「本の話」も、いまでは感想と分析とイメージイラストが全部のっている、よくばり三色丼みたいなことになっています。
分析をのせることには最初ためらいました。私は文学の専門家ではないし、なにより(今まで頭の中でだけ考えてきた)好きな本の「好き」をわざわざ分解して説明するような文章が、ここを訪れる誰かにとって果たしておもしろいだろうか、という不安があったためです。たぶん、本を読んでほしいという目的なら内容の紹介と感想だけでも足りる。けれども、いろいろな分析方法を覚えると同時に批評の実作を読み比べるうち、問いを立てて作品に近づく様子は総じてスリリングで楽しく、それも表現したい、と思えてきたので、分析も書くことにしました。
世界に一つくらいは、こんなよくばりブログがあってもいいんじゃないかと思っています。
一冊の本を、まだ読んだことのない方には昔から知っていたように、読んだことのある方には初めて出会ったように、感じていただけたらさいわいです。
願わくはここに、懐かしく温かい眺めと、見知らぬ色鮮やかな眺望が、同時にひらけるように。



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